おとなの寺子屋 ~平和学を知る~

「AI時代を生き抜く」「マインドフルネス」に続く、おとなの寺子屋12月の会のテーマは、「平和学」でした。平和学、初めて聞く名前でしたが、どんなことをする学問なのでしょうか?今回の講師は、中南米に位置するコスタリカの大学院大学「国連平和大学」で平和学を学ばれた鎌田みどりさんです。

 

平和学とは?

ウィキペディアによると、「諸国家間の紛争の原因、それが起こりうる背景や経済、地政学的な理由から、紛争回避の手立て、方法、平和の維持とその条件などを科学的に研究する学問」だそうです。

講師の鎌田さん。現在、JICAでお仕事をされています。

何だか、ちょっと私達の日常とは縁遠い感じがします・・・が、実はそうでもないのです。鎌田さん曰く、「平和というと戦争がない状態のことだと思っていたのですが、そうじゃないんです。戦争がなくても、差別があったり、人権が守られていないなどの生きづらい状態(構造的暴力というそうです)が発生しているエリアは平和とは言えないんです。被災地もそれに含まれます」。

ただ戦争がないという状態を「消極的平和」、戦争だけでなく戦争の原因となる構造的暴力もない状態を「積極的平和」といい、平和学では後者を目指す研究が行われているそうです。

平和学はとても学際的な研究で、研究のアプローチは、貧窮、飢餓、抑圧、ジェンダー、異文化など多岐にわたります。もともと音楽の教員をしていた鎌田さんのアプローチは「音楽」。「音楽を使って平和を目指せないか」そんな視点で、学んでいたそうです。

 

平和主義の国コスタリカ

ところで、コスタリカに「国連平和大学」って、ちょっとピンと来ない方もおられるのではないでしょうか?かくいう私もそうでしたが、コスタリカは実は、軍隊を持たない「平和主義の国」と言われているのだそうです。

コスタリカは、様々な内戦やクーデターを経験し、1949年に常設軍廃止を決めました。以来、中米の多くの国が争いに巻き込まれる中、この国はそうした混乱からは免れていました。軍を廃止した分、軍事予算は教育予算に回したため、識字率は高く、教育にも熱心なのだそう。人々の民主主義に対する意識も高く、鎌田さんご自身、「職場の同僚やホストファミリーから、皆が幸せに生きられる国であることに誇りを持っていることを、とても強く感じた」とおっしゃっていました。

「Pura Vida(プラヴィダ)」-現地の人がよく使う言葉だそうです。「問題ないよ」という意味で、「自分にありのままで、人を嫌な気持ちにさせない」ことを大事にするコスタリカの人らしさを表している、と鎌田さんは感じているそうです。大らかな国民性が伝わってくるような言葉ですね!

 

どんな人が学んでいる?

ところで、平和学ってどんな人が学び、どんな仕事に就く人が多いのでしょうか?鎌田さんが学んだ「国連平和大学」には、毎年およそ40カ国から学生達が集まり、ここで一年間、平和学を学ぶのだそうです。鎌田さんのような学校の先生や、軍隊関係の人、メディア関係の人、服飾関係の人など様々な背景を持つ人たちが集まっており、鎌田さんはいろいろな刺激を受けたと言います。

鎌田さんは、色々な国の、色々な仕事をしていた人たちと学んだそうです。

鎌田さんご自身はもともと、国際協力、途上国支援などに対する関心が高く、また、太平洋戦争に行っていたおじい様の影響もあり、子どもの頃から戦争が起こる原因についても興味があったと言います。実際に青年海外協力隊の音楽教員として途上国に行ってみると、「国際協力について知識を得たい、学びたい」という想いがさらに強くなり、国連平和大学への進学を決めたそうです。

マイノリティに関心を持っていた鎌田さんご自身は在学中、勉強の傍ら、現地で中南米に多い先住民達の音楽を通じた応援も行っていたとか。先住民の暮らしは、必ずしも人権が守られておらず、そんな先住民達の失われかけている古い音楽を聴きとり、コンサートで演奏して、その素晴らしさを伝える活動をされていたそうですよ。意欲的な方ですね!

国連平和大学で平和学を学んだ人は、鎌田さんのようにJICA、国連などの国際機関、外務省、大使館などの仕事に就く人が多いそうです。

 

積極的平和を目指して・・・

でも、一部の専門的に学んだ人の取り組みだけで、「平和」の状態を作れる訳ではありません。講座の後半、会場からはこんな質問が出ました。「積極的平和の状態を目指して、私達が普段できることはあるのですか?」

これに対し、鎌田さんはこうおっしゃいました。「積極的平和を目指すとは、みんながハッピーなコミュニティを作ることです。そのためには、1人1人の心の持ち様、人との関係性をどう作るかが大切になってくると思います。そして、多様性を受け入れられる人をたくさん作ることが、平和的社会を作ることにつながると考えています」

平和学では、インナーピース(内なる平和)が保たれていることが大事と言われているそうです。インナーピースを感じると、イライラしなくなり、心穏やかになるためで、そういう人が少しずつでも増えていくことが、みんながハッピーなコミュニティにつながるはず、と言います。

鎌田さんはご自身のご経験から、インナーピースを感じられるようになるには、前回の「おとなの寺子屋」のテーマであった「マインドフルネス」が非常に効果的と考えています。鎌田さんは日頃、マインドフルネスを取り入れるようにしているそうですが、マインドフルネスをすると、とても心穏やかで幸せな気持ちになるのだとか。

平和学の話からマインドフルネスの話につながるとは・・・。今回の講座では、「平和学」という新しい世界を知るとともに、何事も1つ1つの積み上げが大事、それが「平和」という大きなものでも同じなのだなと感じました。インナーピース、私もちょっと意識してみようと思います。

 

◆◆◆◆◆◆ 講師プロフィール ◆◆◆◆◆◆

鎌田みどり:宮城県塩釜市出身。音楽教員、青年海外協力隊(ジンバブエ)、JICA新潟デスクを経て、2010年コスタリカの国連平和大学に進学し、メディアと平和学を専攻。「平和的社会の構築のために音楽が果たす役割」が興味分野で、帰国後は、東北復興支援に関わる。現在はJICA人間開発部に所属。国際協力のほか、演奏や音楽通訳も務める。

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取材&写真:まゆみん