「看護師になるには?」おとなの寺子屋で子ども向け講座第4弾開催!

2月16日(土)第4回「なるには講座」が開催されました。講師は看護師の山西智香さんです。智香さんは、日本での看護師経験があるだけではなく、アメリカで病気の子どもと家族の滞在施設「マクドナルドハウス」でボランティアをするなど、看護にまつわる様々な経験をお持ちの方です。看護師の資格と、そうした様々な経験を活かし、常に新しいことにチャレンジしてこられました。そしてこの春からは、なんと大学院に進学されるそうです。今回は、そんな智香さんが語る「看護師になるにはストーリー」です。

■きっかけはお母さん
今回の講座に参加してくれた子ども達のうち2名は、お母様が看護師で、お母様の影響で看護師になりたいと思っているのだそうです。「母親の影響って大きいのだな」と子を持つ親としては、ちょっとドッキリしましたが、実は、講師の智香さんが看護師になりたいと思ったきっかけもお母様。智香さんのお母様は看護師で、夜勤もされていたため、夜、お父様の帰りを家で弟と二人で待っていたということもよくあったそうです。寂しさを感じつつも、病院でテキパキと働くお母様の姿がかっこよくて、小学校の頃の智香さんの夢は看護師になることだったそうです。

■子どもの頃の智香さん
子どもの頃の智香さんは、男の子と外で遊ぶのが大好きな元気な女の子でした。食べることも大好きで、給食は毎回おかわりをしていたので、「給食クィーン」と呼ばれていたとか。中学生時代は陸上部に所属し、100メートル走やハードルなどの競技で学生のためのオリンピックと言われている「ユニバーシアード神戸大会」にも出場していたそうで、なかなかのお転婆さんだったようです。

一方で、世話好きな一面もあり、同じクラスの障害を持った男の子の車椅子を押して教室移動を手伝ったり、給食を食べる時の介助などもよくしていたそうです。このあたりに、智香さんの看護師気質の片鱗が見えますね。

■本格的に看護師を考え始める
高校生時代、智香さんが本格的に看護師への道を考える出来事がありました。智香さんは家庭の事情で、佐賀のお祖母様の家で暮らすことになりました。お祖母様は、糖尿病の合併症でほとんど目が見えなくなっていたので、智香さんは普段からいろいろなお手伝いをしていました。

お祖母様が低血糖で倒れた時のこと。お母様に電話すると、「砂糖をなめさせて」と言われたそうです。「糖尿病なのに、砂糖をなめさせて大丈夫なのかな?」と思いつつも、言われた通りにすると、お祖母様の調子が戻った・・・そんなことが何回かあり、「糖尿病って、どんな病気?」「砂糖はどのくらいなめるのが適当?」と病気や体の仕組みに興味がわき、「病気で困っている人を助ける看護師になりたい」と思うようになったそうです。

■看護師への道
智香さんは、高校を卒業して、看護専門学校に進学します。卒業後、看護師国家試験に合格し、念願の看護師になりました。最近では、看護専門学校は減り、4年生の看護大学(看護学部)が増えてきているので、大学で学び、国家試験を受け、看護師になるケースが多いようです。看護師として最初に働き始めたのは「脳外科」。脳卒中など急患で運ばれてくる人が多く、毎日とても忙しかったそうです。そんな中で、脳外科特有の観察点、手技、手術前後の処置や管理など必死に学びました。

1年間、勤めた後、お父様の駐在先であるインドネシア大学に3年間、留学します。その間、現地の孤児院や病院でボランティアをしました。その経験を通して、国際的な仕事もしてみたいと考えるようになり、帰国後は海外協力への経験のため、東京大学医学部附属病院に就職しました。

■印象的な患者様
大学病院で出会ったいろいろな患者様は、今の智香さんの働き方に大きく影響を与えたようです。最も印象的だったのは、末期がんのある女性患者さん。智香さんと年齢が近かったこともあり、仲の良い患者さんだったそうです。その方は、病状が重く、病院の外には出ることができなかったので、普段は病室でずっとパジャマでお化粧もせず、暗い表情でいることが多かったそうです。

ある時、智香さんが「一緒に買い物に出かけてみない?おいしいものを食べて気分転換でもしない?」と誘い、二人で外出することになりました。その方が普段とは違い、きれいにお化粧をして楽しそうにしている様子、キラキラな笑顔がとても印象的で、智香さんはふと「病院の中での治療も大事だけど、病院の外で看護師としてできることもあるのでは?私は、病院の外で生きているって楽しいと思ってもらえるような仕事をしたい」と思ったそうです。でもその時は、何をしてよいのかわからず、そのままになっていました。

またVIPルーム(各国の首脳や財界の重鎮が利用する立派な個室のこと)を担当した時のこと。VIPルームのベッドや設備は豪華なのに、入院患者様にとって唯一の楽しみである食事がプラスチック容器に盛られているのを見て、智香さんは「プラスチックの器で食事を楽しむ雰囲気もなく、とても残念」と感じたそう。そんなことから、病院食の在り方に問題意識を抱くようになり、「テーブルコーディネーター」の教室に通い始めました。

買い物に出かけた時の患者さんのキラキラな笑顔、VIPルームなのに料理がプラスチック容器で提供されていたこと、一見、看護のお仕事とはなんの関係もないように見えますが、智香さんのこの気づきが、後の智香さんらしい働き方にもつながってきます。

 

■結婚、出産で看護師の仕事を一旦、離れる
26才で結婚し、29才で第一子を出産をした智香さんは、仕事をやめ、子育てに専念します。そしてご主人の都合で、ニューヨークで暮らすことになります。第二子はアメリカで出産。麻酔を使って痛みを和らげながら行う「無痛分娩(アメリカではこれが当たり前だそう)」を経験します。子育てが落ち着いてくると、「マクドナルドハウス」という家から遠く離れた病院で治療をしなければならない子どもと親のための滞在施設でボランティアとして働きます。マクドナルドハウスでは、病気で宿泊している子どもたちが空手やバレエのレッスンを受けているのを見て「病気の子ども達も普通の子どもと同じように楽しい体験をさせる」という発想にビックリ「日本なら入院している子はおとなしくするよう言われるのに」と衝撃を受けたそうです。

帰国後は、お子様が小さかったこともあり、忙しい病院の仕事ではなく、「テーブルコーディネート」のサロンを始めます。さらに、テーブルコーディネートのお仕事をしながら、看護師の資格も活かせないかと考え、始めたのがお祝い出張サービス「家・笑・結(かわゆい)」でした。これは、病院や福祉施設、自宅をレストランのようにして、患者様がお祝いごとを楽しめるようにするというサービスです。

高齢化時代を迎え、自宅で病気の治療をしたり、介護を受ける人が増えてきています。誕生日のお祝いなど、健康だったら気軽にできる外出も、酸素マスクや点滴をつけている人にとっては大変なことで、次第に外出も億劫になるそうです。介護される本人もつらいことですが、介護する家族も、「介護のために自分の生活を楽しむことができない」、「いつまで続くんだろう」と考えがちになることも多いのだとか「だからこそ、介護する人もされる人も、そんなストレスから少しでも開放されて、自宅にいながらも日常とは違う華やかなお誕生日や米寿のお祝い楽しめる場を作りたいと思ったんです」と智香さん。これはまさに、患者様を買い物に連れ出した時に考えた「病院の外でできるサービス」ですね!思い立った時には漠然としていたものが、こんな風に形になっているのですから、不思議です。

■看護師の働き方
看護師の働く場所といえば病院というイメージが一般的な中で、看護師の資格と、テーブルコーディネートの資格の双方を活かした智香さんの働き方は、異色な例かもしれません。でも、病院以外で看護師の資格を活かして働くことができる場所は、実は結構あるそうです。例えば訪問看護、クリニック、介護施設、治験(厚生労働省から薬として承認を受けるために行う臨床試験)のコーディネート、学校の保健の先生、産業看護師(会社の診療所で働く看護師)、保健師(市町村で働く看護師)、フットケア、アロマ講師・・・。中でも参加した子どもたちが一番驚いたのは、キャビン・アテンダント。看護師の資格を持っていれば、機上で何かあった時に対処しやすいということで、採用する会社が増えているそうですよ。

また、海外で看護師として働いたり、国境なき医師団に参加するなど、グローバルに働きたいという人も増えており、日本で看護師の資格を取った後、さらに海外の資格を取りに留学をする人も多いそうです。なので、英語はとても大事だそうですよ。(算数や数学ももちろんね)

■看護師の働き方の幅をもっと広げたい
お子様も中学生になり、少しずつ子育てから手が離れてきたこともあり、智香さんは、この春から大学院に進学されるそうです。子育てをしながら、看護の仕事を続けるのは難しいと感じていたご自身の経験を元に、看護の仕事を自分のペースで、自分らしく続けていける看護師の新しい道は作れないか、そんな看護師のキャリアデザインや可能性についてもっと勉強したいとおっしゃいます。

実際、看護師の資格を持っているのに、働いていない「潜在看護婦」は約70万人2025年には200万人の看護師が必要と言われているにもかかわらず、現在、働いている看護師は154万人。現場に戻りやすいきっかけや方法がもっとたくさんあれば、眠っている看護師の力をもっと活かせるはず。そして看護師が増えれば、ワークシェアリングもしやすくなり、結婚、出産、子育て、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方ができるようになるのでは、と考えておられます。智香さんのようにふとした気づきから、看護師の資格と別の資格を組み合わせて起業するという方法もあります。

■みなさんへのメッセージ
智香さんはお母様から「女性が強く生きていくためには自立することが大事。」と言われて育ったそうです。実際、智香さんが転職をする時も、看護師という資格を持っていることは安心材料になったと言います。さらに、経済的に自立できたからこそ、自分のやりたいことに投資ができ、仕事の幅を広げることができたと実感しているそうです。

「看護師の役割で一番大事なことは患者様に寄り添うこと」と智香さんは言います。患者様は、不安があっても医師には言いづらいこともある。そんな時に、両者の間に立って患者様の不安を和らげる、そんなコーディネーター的な役割を果たすことがとても大事なのだそう。

「例えば入院する時、患者様は初めてでもそうでなくても、いろいろな不安を抱えています。看護師の言葉遣い、接遇、笑顔、噛み砕いて説明する、そういう言動一つで、患者様の不安はずいぶん和らぐんですよ」と智香さん。中でも智香さんが一番大事だと感じているのが笑顔「笑顔は不安を解消する大きな力。皆さんには是非、笑顔の素敵な女性になって、患者様をホッとさせる、そんな存在になってほしいです。そのためには、自分のことを好きになり、大切にすることが実は大事だということを覚えておいてくださいね」

■参加者のコメント
「看護師の資格を取ったら、どういう仕事ができるかということはわからなかったけど、看護師の資格を活かした仕事も色々あるんだなと思った」(まお)

「看護師の資格を使っていろいろな仕事ができるところに驚いた。何より一番ビックリしたのは、CAになる人も多いということだった!」(はるな)

「小さい頃に入院したことがある。お父さんやお母さんがそばにいない時、看護師さんは、いてくれるだけで安心できる存在だった。いるだけで安心される職業ってかっこいいと思った」(なるみ)

「看護師になりたてのころは、先輩も厳しかったし、慣れなくて大変だったけれど、5年目くらいから仕事がすごく楽しくなった。患者さんは、「先生には言えないけど看護師さんには言える」「家族にはいえない弱音を看護師さんには言える」と信頼していろいろな話をしてくれる。すごく素敵な仕事だと思う。看護師の仕事は大変だけれど、とても楽しいので、皆さんと是非、一緒お仕事できるといいな」(現役看護師)

「看護師さんはコーディネーターというのはまさにそのとおり。「病気を治す」というゴールは医師も患者も同じですが、医者は「治る」ということに目を向けがち。でも患者さんは治ること以外にも、家族のこと、経済的な負担など様々な不安を感じておられます。「治る」以外の面の患者さんの不安について、以前、看護師さんに「患者さんが、こんな風に話してましたよ」と教えていただいたことがあって、とてもありがたかった経験があります」(医師・吉田穂波先生/前回の「なるには講座」の講師)

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智香さんのお話から、看護師さんって見えないところで実に細やかに患者さんに気を配っているのだと知り、改めて素敵なお仕事だと思いました。

次回のなるには講座は以下の通りです。次回もまた、たくさんの子ども達に聞いてもらいたいですね。

「サッカー選手になるには」

日時:5月11日(土)17時00分~18時30分

場所:おとなの寺子屋

講師:中村彰(元川崎フロンターレ選手)